歴史・文化史・民俗学
俄を演じる人々娯楽と即興の民俗芸能
俄を演じる人々

松岡薫[著]
A5判/280頁
本体6400円(+税)
ISBN978-4-86405-156-9
C1039
2021.2

民俗学・民俗芸能


その年の祭礼だけで上演され、台本や記録を残さないことが多い「俄」。
世相風刺や機知に富む滑稽な芝居は、いつ頃から作られ、どのように上演されてきたのだろうか。北部九州での現地調査から、制作と上演の様子をつぶさに観察し、この即興芸能が創出される現場をリアルに捉える。


【目次】

序章 本書の視座──現代民俗学としての民俗芸能研究に向けて
第一節 問題の所在
第二節 調査地の概要
第三節 本書の構成

第1章 〈芸〉としての俄の成立──幇間芸から民俗芸能へ
第一節 はじめに
第二節 俄の誕生──近世大坂での展開から
第三節 近代以降の俄の変遷──福岡県を事例に
第四節 今日の俄とその特徴──民俗芸能としての俄へ
第五節 おわりに

第2章 向上会の誕生──大正期における祭礼の資源化と演者集団の組織化
第一節 はじめに
第二節 大正期における高森町の地域概況
第三節 南郷谷の夏祭りから熊本県下の夏祭りへ
第四節 「肥後の三馬鹿騒ぎ」の誕生
第五節 祭礼の改良にみる地域振興としての風鎮祭
第六節 向上会の結成
第七節 おわりに──風鎮祭における「大正一五年」という時期

第3章 俄を演じる人々──〈演技の共同体〉の継承実践
第一節 はじめに
第二節 向上会の活動内容
第三節 風鎮祭における向上会の活動
第四節 向上会の人々
第五節 向上会員になる
第六節 高張として関わる
第七節 おわりに

第4章 俄の演技が生まれるとき──やり取りの〈場〉からみる演技の創出
第一節 はじめに
第二節 風鎮祭における俄の演じられ方
第三節 俄の演技の作られ方
第四節 俄の演技を生み出すもの──即興と定型
第五節 おわりに

終章 結論──現代における民俗芸能の継承プロセスと創造性
第一節 本書の総括
第二節 〈演技の共同体〉からみる向上会の活動
第三節 演技の継承プロセスと創造的演技

おわりに


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【著者紹介】
松岡 薫(まつおか かおる)
1982年 福岡県生まれ。2018年 筑波大学大学院人文社会科学研究科歴史・人類学専攻修了博士(文学)
専門は、民俗学と民俗芸能研究。現在は、天理大学文学部歴史文化学科考古学・民俗学研究コース講師
主な論文に、「俄の〈芸〉が生まれるとき──熊本県阿蘇郡高森町の風鎮祭を事例として」(『民俗芸能研究』第53号、2012年)、「大正期阿蘇地方における祭礼の資源化──鉄道・新聞メディアに注目して」(『史境』第70号、2015年)、「俄を演じるのは誰か──熊本県阿蘇郡高森町の風鎮祭を事例として」(古家信平編『現代民俗学のフィールド』吉川弘文館、2018年)