日本近現代史
療法としての歴史〈知〉いまを診る
療法としての歴史〈知〉

本体2500円(+税)
方法論懇話会[編]
四六判/336頁

978-4-86405-154-5-1
C0321
2020.12

日本近現代史


今と未来を生きるための処方箋《プリスクリプション》
経済の低迷とたび重なる自然災害、さらにパンデミックにもみまわれた日本では、保守化・中央集権化がいっそう進み、それに歩調を合わせるような内向きの日本礼讃と排外志向の文化・メディア状況が目立っている。
蔓延する現代日本のさまざまな〈症例〉に対して、歴史的な知見をふまえて歴史学・社会学・民族学・宗教学・思想などの人文諸学が解決策を提示するアクチュアルな試み。

【目次】

はじめに 生存のツールとしての歴史〈知〉へ 本書のねらい (北條勝貴)
【I 政治の病】
   症例01  国民国家は〈進歩の到達点〉か 国家の前提化を放棄する想像力(北條勝貴)
症例02  〈日本民族〉は存在するのか 近代日本における民族の創出と認識の混乱(岡本雅享)
症例03  アイヌは〈自然と共生する〉民族か 現代のアイヌ民族表象の背景と歴史実践(是澤櫻子)
症例04  日本人は〈アジア諸国から不当に攻撃〉されているのか 〈反日〉という妄想(加藤圭木)
症例05  〈戦後は終わった〉と考えてよいのか 死者と生者をつなぐ事業 沖縄の戦死者遺骨が喚起する社会デザイン(佐藤壮広)

【II 社会・経済の病】
症例06 現代日本は〈裕福〉なのか〈貧困〉なのか 「ミドル」から「マイルド」へ(川端浩平)
症例07 日本は〈定住社会〉か 「移動」から見る「日本」社会 人は生きるために移動する(工藤健一)
症例08 〈前近代は性的に寛容〉は本当なのか クィアな死者に会いに行く 前近代のジェンダー/セクシュアリティを問うための作法(杉浦 鈴)
症例09 〈日本人は勤勉〉なのか 創られ変移した「勤勉」(須田 努)
症例10 〈戦死者を国家が祀る〉のは当たり前なのか 国家が専有する慰霊(西村 明)

III 文化の病
症例11 日本人に〈日本史〉は必要か 誰一人取り残さない歴史を求めて(内田 力)
症例12 神道は〈日本固有の伝統宗教〉か 神道をめぐる〈幻想〉の正体(門屋 温)
症例13 神話は〈日本精神の淵源〉か 生成し続ける神話(アンダソヴァ・マラル)
症例14 列島文化は自然と〈共生的〉か ディストピアの時代の愉楽 (黒田 智)
症例15 アニメーションは〈日本のお家芸〉か  創られた自意識 アニメーションと日本文化(師 茂樹)
おわりに  本書読解のひとつの道しるべ (水口幹記)

コラム1 家という名の暴力 女性差別否定論に抗する(杉浦 鈴)
コラム2 列島社会は〈無宗教〉か(土居 浩)
コラム3 災害列島で文化財を残すということ 東日本大震災と埋蔵文化財事業(池田敏宏)


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方法論懇話会(編)
1998年、歴史・文化を研究するための方法をめぐる、学際的な議論・情報交換の場として設立。人文・社会の各分野から若手研究者が集い、〈越境〉を旨として切磋琢磨を続けた。2007年、機関誌『Gyrativ@』4を刊行して活動を休止したが、今回は、2003年刊『日本史の脱領域』(森話社)をよりアクチュアルに改訂するため、新たな書き手を加えて関連分野のメンバーが集まり、限定的に復活した。

北條勝貴
上智大学文学部教授 専攻=東アジア環境文化史
『環境と心性の文化史』上下(増尾伸一郎・工藤健一と共編著、勉誠出版、2003年)、『パブリック・ヒストリー入門──開かれた歴史学への挑戦』(菅豊と共編著、勉誠出版、2019年)

岡本雅享
福岡県立大学人間社会学部教授 専攻=政治社会学、民族学
『民族の創出』(岩波書店、2014年)、『出雲を原郷とする人たち』(藤原書店、2016年)

是澤櫻子
国立アイヌ民族博物館 アソシエイトフェロー
専攻=文化人類学(先住民政策、アイヌ、シベリア)
「ロシア連邦における集権的な先住民組織についての人類学的研究」(修士学位論文、東北大学大学院環境科学研究科、2020年3月)

加藤圭木
一橋大学大学院社会学研究科准教授 専攻=朝鮮近現代史
『植民地期朝鮮の地域変容──日本の大陸進出と咸鏡北道』(吉川弘文館、2017年)、『だれが日韓「対立」をつくったのか──徴用工・「慰安婦」、そしてメディア』(岡本有佳と共編、大月書店、2019年)

佐藤壮広
立教大学・明治大学・大正大学ほか非常勤講師
専攻=宗教学、人類学(沖縄研究、表現文化論)
『沖縄民俗辞典』(共編著、吉川弘文館、2008年)、『年表でわかる 現代の社会と宗教』(共著、渡邊直樹責任編集、平凡社、2017年)

川端浩平
津田塾大学学芸学部准教授
専攻=社会学、カルチュラル・スタディーズ、日本研究(Japan Studies)
『ジモトを歩く──身近な世界のエスノグラフィ』(御茶の水書房、2013年)、『排外主義と在日コリアン──互いを「バカ」と呼び合うまえに』(晃洋書房、2020年)

工藤健一
青山学院大学非常勤講師 専攻=日本中世史
『環境と心性の文化史』上下(増尾伸一郎・北條勝貴と共編著、勉誠出版、2003年)、「異界・異人──「こぶとり」にみる怪異」(上杉和彦編『経世の信仰・呪術』竹林舎、2012年)

杉浦 鈴
上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程 専攻=日本中世社会史
「動産としての身体──中世の飢饉と人身売買」(『人民の歴史学』223、2020年3月)、「中世前期葛川における「追出」と起請文」(修士学位論文、上智大学大学院文学研究科、2020年)

須田 努
明治大学情報コミュニケーション学部教授 専攻=日本近世・近代社会文化史・民衆史
『「悪党」の一九世紀』(青木書店、2002年)、『吉田松陰の時代』(岩波書店、2017年)

西村 明
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授 専攻=宗教学、宗教史学
『戦後日本と戦争死者慰霊──シズメとフルイのダイナミズム』(有志舎、2006年)、『慰霊の系譜──死者を記憶する共同体』(村上興匡と共編著、森話社、2013年)

内田 力
東京大学東洋文化研究所特任研究員 専攻=日本近現代史
「ある海軍技師の光学技術と戦後メディア──カメラ・幻灯・テレビ」(大塚英志編『動員のメディアミックス』思文閣出版、2017年)、「日本中世史家網野善彦による歴史の視覚化──1980年代の出版メディアと歴史研究者」(『マス・コミュニケーション研究』97、2020年7月)

門屋 温
清泉女子大学非常勤講師 専攻=日本思想史
「解体する神話・再生する神々──中世における『旧事本紀』の位置」(伊藤聡編『中世神話と神祇・神道世界』竹林舎、2011年)、「ロールオーバー・ノリナガ」(斎藤英喜・山下久夫編『越境する古事記伝』森話社、2012年)

アンダソヴァ・マラル
カザフ国際関係外国語大学講師、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員 専攻=日本古代文学
『古事記 変貌する世界』(ミネルヴァ書房、2014年)、『ゆれうごくヤマト』(青土社、2020年)

土居 浩 ものつくり大学技能工芸学部教授 専攻=民俗学/地理学、日常意匠研究
「都市で死者はいかに扱われるべきか」(『国立歴史民俗博物館研究報告』205、2017年3月)、「高取正男における納戸の神の位置付け」(『人文学報』113、京都大学人文科学研究所、2019年4月)

黒田 智
金沢大学人間社会研究域教授 専攻=中近世日本文化史、歴史図像学
『里山という物語』(結城正美と共編著、勉誠出版、2017年)、『草の根歴史学の未来をどう作るか』(吉岡由哲と共編著、文学通信、2020年)

師 茂樹
花園大学文学部教授 専攻=仏教学、人文情報学
『論理と歴史──東アジア仏教論理学の形成と展開』(ナカニシヤ出版、2015年)、『『大乗五蘊論』を読む』(春秋社、2015年)

池田敏宏
(公財)とちぎ未来づくり財団埋蔵文化財センター副主幹 専攻=仏教考古学、日本仏教史
「最澄・空海の交流〜訣別──両者の心のつながりがなくなったのはいつか」(『日本史資料研究会ぶい&ぶい新書002 日本史のまめまめしい知識』2、岩田書店、2017年)、「続・古代在地仏教研究へ向けての序──造塔意識の変化を中心に」(『地域考古学』4、地域考古学研究会、2019年5月)

水口幹記
藤女子大学文学部教授 専攻=東アジア文化史
『古代東アジアの「祈り」』(編著、森話社、2014年)、『前近代東アジアにおける〈術数文化〉』(編著、勉誠出版、2020年)