日本文学[近代]
〈介護小説〉の風景  高齢社会と文学[増補版]
〈介護小説〉の風景[増補版]

米村みゆき・佐々木亜紀子[編]
四六判/344頁
本体2400円(+税)
ISBN978-4-86405-079-1
C1095
2015.5

日本文学[近代]


文学は介護をどのように描いてきたのか? そこに描かれた介護は、現代の私たちに何をなげかけるのか?
古くは明治期の漱石から、現代の村上春樹や東野圭吾までを対象に、小説内に潜む介護の受け手・担い手の声に耳をすまし、類型化を拒むひとりひとりの〈老い〉に向きあう。新たな論考、コラムを追加した増補版。

【目次】

増補版 序──〈介護小説〉というものさし…………米村みゆき・佐々木亜紀子

はじめに──〈介護小説〉から見えてくるもの…………米村みゆき・佐々木亜紀子
第1章 〈記憶〉を書く男たち──青山光二と耕治人の老老介護小説…………佐々木亜紀子
第2章 介護するのは何のため?──家族介護の動機付けをめぐって…………山口比砂
第3章 高齢社会の「解釈」を変える──有吉佐和子『恍惚の人』と〈現実〉の演出…………米村みゆき
第4章 管理される「老い」/監視される「主婦」──一九六〇年代『瘋癲老人日記』が語る介護…………杉田智美
第5章 介護と〈反介護〉の風景──されたくない「私」からの解放を求めて…………古川裕佳
第6章 どこで暮らすか? 誰と暮らすか?──高齢者の性愛と〈介護小説〉の可能性…………光石亜由美
第7章 〈老い〉と〈狂気〉の物語………──島崎藤村『ある女の生涯』はいかに語られたか…佐々木亜紀子

コラム@ たとえ記憶を失くしても 認知症の人々に残る心…………大鹿貴子
コラムA 高齢者夫婦の行方 最晩年、最期、そして死後…………佐々木亜紀子
コラムB 『抱擁家族』の三十年後 小島信夫の〈介護小説〉における反因果性…………崔正美
コラムC 精神的ケアとしての「傾聴」 ドレス・レッシング『夕映えの道』…………山口比砂
コラムD 介護報道をめぐって 石坂浩二・浅丘ルリ子の離婚劇…………大鹿貴子
コラムE 宮崎駿の描く老い=@『ハウルの動く城』の場合…………米村みゆき
コラムF 私の病気は誰のもの? 被介護者のインフォームド・コンセント…………大鹿貴子
コラムG 〈介護小説〉の外側で 映画『殯の森』『わらびのこう』、介護短歌にみる〈介護〉…………杉田智美
コラムH 女中の介護/女中を介護 家族の境界にいる使用人たち…………古川裕佳
コラムI 佐江衆一の描く「介護殺人」小説 『老熟家族』について…………崔正美
コラムJ マイノリティの老後 映画にみる新しい老後の生き方…………光石亜由美
コラムK 〈老女〉のセクシュアリティ 円地文子の描く「山の女」…………崔正美
コラムL 介護の場としての「精神病院」 『恍惚の人』『花いちもんめ』にみる社会的入院…………光石亜由美

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【編者紹介】
米村みゆき(よねむら みゆき)
専修大学教員。日本近現代文学、アニメーション文化論。
『宮沢賢治を創った男たち』(青弓社、2003年、日本児童文学学会奨励賞受賞)、『村上春樹?表象の圏域──『1Q84』とその周辺』(編著、森話社、2014年)

佐々木亜紀子(ささき あきこ)
愛知淑徳大学ほか講師(非常勤)。日本近代文学。
『漱石 響き合うことば』(双文社出版、2006年)、「既視(デジャ─ヴュ)の物語『1Q84』──始まりとしての〈声〉」(『村上春樹?表象の圏域──『1Q84』とその周辺』森話社、2014年)

【執筆者紹介】
山口比砂(やまぐち ひさ)
豊田工業高等専門学校教員。日本近代文学。
「夏目漱石から見た「衆」──明治四十年の雲右衛門人気を軸として」(『日本近代文学』第75集、2006年11月)、「漱石とパスカル──「無限」概念をめぐる考察」(『国文学年次別論文集?近代U〔平成19年〕』2010年1月)

杉田智美(すぎた ともみ)
国際日本文化研究センター機関研究員。日本近代文学・文化。
「水際のモダン──身体と欲望の劇場へ」(『スポーツする文学──1920─30年代の文化誌学』青弓社、2009年)、「〈民族〉を記憶する方法──知里幸恵の主体化をめぐって」(『JunCture』第4号、2012年3月)

古川裕佳(ふるかわ ゆか)
都留文科大学教員。日本近代文学。
『志賀直哉の〈家庭〉──女中・不良・主婦』(森話社、2011年)、「罹災都市東京の語り部・幸田文──喪失による再発見・新発見」(『国文学論考』第51号、2015年3月)

光石亜由美(みついし あゆみ)
奈良大学教員。日本近代文学。
「大正期の〈精神病院〉文学」(『文学批評敍説』V─7、2011年9月)、「中島敦「プウルの傍で」における──朝鮮人遊廓の表象と〈越境〉への欲望」(『日本言語文化』第29集、韓国日本言語文化学会、2014年12月)

大鹿貴子(おおしか たかこ)
攻玉社中学・高等学校教諭。日本近代文学。
「堀田善衛『工場のなかの橋』を読む──小説『鑑賞』の試み」(『立教大学大学院日本文学論叢』第5巻、2005年11月)、「酒と会話と男と女──井上友一郎『水鳥』論」(『立教大学日本文学』第97号、2006年12月)

崔正美(さい まさみ)
名古屋国際学園教員。日本近代文学。
「〈帰国子女〉というステイタス──水村美苗『私小説 from left to right』論」(『アジアの中の韓国日本研究』プロジェクト記録集、名古屋大学大学院文学研究科、2007年)